ハザマでシジマな瞑想所

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ボンドルドとプルシュカと愛 -劇場版メイドインアビス・感想

こんばんは、ハザマシジマです。

 

今回は、「劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明」を見ての感想となります。

メイドインアビスの映画、およびアニメのネタバレにご注意ください。

また、R15+の映画の内容にもなるので、猟奇的な内容にもご注意ください。

 

今回の映画の内容は、主要登場人物については知っており、展開については漫画で走り読みした程度の前知識で観てきました。

 

 

 

 

 

 

私が映画を観る前に一番楽しみにしていたのは、登場人物の一人、ボンドルドです。

「彼が映像化されたら、どのように動くのだろうか?」という純粋な好奇心がありました。

そして、以前漫画を読んだときには、走り読みして展開を把握しきれなかった部分もあるので、映画にて「彼はどのような人物なのか?」を改めて観ておきたかったです。

 

実際に映画を観たところ…観劇前に楽しみにしていたボンドルドと、彼の娘のプルシュカのことが、非常に印象に残りました。

 

 

 

ボンドルド:人への愛と、倫理観を超えた行動を両立させた人物

まずは、ボンドルドについて。

アニメ中での出番はほぼ無かったものの、ナナチの話には出てきていました。その話によると…

身寄りのない子供から、大穴アビスに行きたい人を募り、アビス内まで安全に連れてゆきました。

子供たちは順番に、一人一人冒険に行くものの、誰も帰ってきません。

そこでナナチは、こっそり後を付けてボンドルドの様子を見に行くことに。すると、子供たちについて「あれらは人間としての運用はしておりませんので」と語るボンドルド。周囲の様子から、子供を実験に使っていることが分かりました。

アビス内で上昇するときに人間にかかる諸症状「アビスの呪い」を抑えるための実験。ボンドルドは、それを抑えるために「誰かが呪いを肩代わりすれば良いのでは」と考えており、人間以外で呪いの肩代わりをしても上手く行きませんでした。そこで、肩代わりを人間で行うことに。

ボンドルドは、親友同士のナナチとミーティを実験に使いました。ミーティがナナチの分の呪いも肩代わりする側になりました。昇降機で二人が降ろされたのは深界六層。六層で上昇するときにかかる呪いは「人間性の喪失、あるいは死」。

二人が引き上げられたとき…ナナチは、人間性を保ったまま獣人のような姿になりました。

一方、ミーティ。彼女は呪いを受け、苦痛と身体の変形が起きました。苦痛に悶えて「殺して」と懇願するも、彼女は人間性を喪失し、死ねない身となりました。

 

この話を知ったときは、私はボンドルドについて

「物腰は柔らかいが、冷徹だ」「筋金入りのろくでなしと呼ばれるだけのことはある」「彼は人間性や愛をとうに失ったのか?」

と思いました。

 

 

しかし、映画を観て、一部覆されました。

彼に愛はありました。ただ、愛を理由に非人道的な行為を躊躇うことはないだけで。

 

彼の最初の非人道的な所業は、彼自身に対してでした。

アビスの深界六層以降に行くには、白笛が必要です。そしてその白笛を作るには、「白笛を持つものに対して全てを捧げても良い」と思う者の命を奪い、材料の「命を響く石」を手に入れる必要があります。

そこで彼は、自らの身体を捧げて白笛を完成させました。

なお、劇中でのボンドルドは、祈手と呼ばれる配下と精神を共有することで、活動しています。

 

ボンドルドが繰り返した実験結果より、「誰かの呪いを肩代わりするには、肩代わりする側が、肩代わりしてもらう側に愛を持っている必要がある」とのこと。(うろ覚え)

すると、劇中でボンドルドが使っていたカートリッジについて、ある想像が頭をよぎりました。

カートリッジは、子供の身体を生きたまま削ぎ、数日間の生命維持ができる程度の臓器だけ残して、箱に詰めた物。これを使って、彼はその身にかかる呪いを、子供たちに肩代わりさせていました。

カートリッジに加工され、カートリッジとしての役割を果たした子供たち。

「彼らはもしかして、ボンドルドの娘のプルシュカと同様に、ボンドルドを愛し、同時に愛されてきたのだろうか」と。

 

劇中でのボンドルドは、実験に使ってきた子供達も、カートリッジにした子供達も、一人一人名前を憶えていました。

リコに「他人ではなく自分に呪いを肩代わりさせれば良い」と言われたときも、ボンドルドは「今の我々(現在のボンドルドと祈手達)では、人間性があるとみなされないので呪いの肩代わりは不可能。心外です」と答えていました。

きっと、彼自身を犠牲にして済むことならば、自身を犠牲にしていたのでしょう。

 

そして、ボンドルドと連れてきた子供たちとの関係について、更に想像が膨らみました。

そもそも彼が集める子供たちは、スラム街出身だったり、口減らしの為に捨てられていたり。身寄りのない子供達でした。

そして、否応なくさらうのではなく、あくまでアビスに行きたい子供を募っていました。実際子供たちは、手練れの探窟家でも中々行けない、ボンドルドの活動場所の深界五層まで確実に到着していました。

ボンドルドは実験のためとはいえ、身寄りのない子供たちに愛情と安全な場所を提供していました。

 

劇中でナナチが言ったように、ボンドルドはゲス外道で間違いはないと思います。

が、私が彼をゲス外道と呼ぶなら、もう少し同時に添える言葉が欲しいところです。

 

 

 

プルシュカ:苦痛を受けてなお、父と友人を想い、自らの希望を持った少女

そして、プルシュカ。ボンドルドの娘。

彼女が残した言葉が、映画の中で一番強く響きました。

 

劇中でボンドルドの配下の祈手達が、ロボットの少年レグの身体を弄り、右腕を切り落としてしまいます。それがきっかけで、彼の片腕を取り返すため、リコ隊とボンドルドとの闘いが始まりました。

 

ボンドルドと祈手達によってプルシュカがカートリッジに加工され、彼女は朧気ながらも自らの手足が切り離されている様子を見ていました。

 

「痛いのが増えていく」

カートリッジとしてボンドルドに使われているときも、彼女は痛みを感じていました。それでも、彼女は父親であるボンドルドを想い、同時に出会って間もないリコ達を想っていました。

カートリッジの中に居ながら、ボンドルドとリコ達の闘いの様子を知って

「パパ、皆と仲直りして」「一緒に冒険するのに、喧嘩しちゃだめだよ」

とボンドルドにお願いするプルシュカ。

 

彼女の「喧嘩しちゃだめだよ」というシンプルな言葉が一番涙腺にきました。

 

痛みに耐えながらなお、リコ、レグ、ナナチに加えて、ボンドルド、プルシュカを合わせた5人で冒険する様子を思い描いていました。

プルシュカは、アビスへと冒険に行く夢を、ずっと持っていました。

 

戦闘後、プルシュカが入ったカートリッジをリコが回収しました。

プルシュカの中身があふれ出したのは、リコがカートリッジを抱えた後。プルシュカは、リコに抱えられながら最期を迎えることができたのでしょうか。

そして、プルシュカのカートリッジから出てきたのは白笛の材料、命を響く石。

この出来事は、「彼女がリコへ、全てを捧げても良いと願った」ことを意味します。

 

出会ったばかりの相手にそこまで願うくらいに、プルシュカの愛は強いものでした。

これは彼女の生来の資質なのか?ボンドルド達の愛情の賜物か?あるいは彼女自身の「一緒に冒険に行きたい」という願いも込みなのか?

 

どれにせよ、プルシュカの心の強さがとても印象に残りました。

 

 

大分長くなりましたが、今回は以上です!ここまで読んでくださって、ありがとうございました!

メイドインアビスは、厳しさや生々しさが強くて、その分愛も強く見えてくるように感じました。