ハザマでシジマな瞑想所

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映画「若おかみは小学生」感想(ネタバレ、悪態有)

こんばんは、ハザマです。

先日地上波に流れてきた「若おかみは小学生」を視聴しました。

 

物語の舞台は、とても美しい場所でした。

窓に張り付いた小さなヤモリの足の動きも、空に掲げられ列をなす鯉のぼりのはためきも。眼鏡の屈折も見どころでした。

小さなものから大きなものまで、魅力が引き出された画が展開されていました。

視聴中に、自然の映像を目にして草木の匂いを想起するほどに。

 

 

人と人とが織り成す温泉旅館での物語ということもあり、旅館でのきちんとした作法に時々背筋を正されるような気になりながらも、温かい雰囲気を物語全体に感じました。

 

ここまでの感想をお読みになって、気になった方は是非ご覧ください。

ここから先は、ネタバレ有の初見感想となります。

 

 

物語の内実

「若おかみは小学生」は先ほど記述した通り、温かい物語です。

が、物語の大筋は非常に残酷。

小学6年生の織子が主人公。家族で祖母のいる旅館に向かい、現地の村の祭りを見物。彼女の両親はその祭りで踊る人を見て「おっこ(織子)が躍るところを見てみたい」と言います。

そんな会話を交わした直後、旅館からの帰り道で、彼女は両親を交通事故で亡くします。そして日が経たない内に、転校先への登校に、若女将としての仕事もこなし始めます。

若女将となった織子は、旅館に来た人や、同級生と衝突しながらも。幽霊の悪戯にふりまわされながらも。一生懸命駆け回って周囲を動かしました。

そうして忙しく女将業と学業に打ち込んでいるうちに、織子の車と衝突した車の運転手が、家族連れで宿泊に来ました。

織子は両親の死が脳裏にフラッシュバックし、苦しくなるも、「花の湯温泉は誰も拒まない」という言葉を胸に、加害者を許すことにしました。

そして両親の死から約1年後、旅館を継ぐ人間のみが立てる、村の踊りの舞台に織子は立ちました。かつて両親が見たいと言った舞を踊り、彼女は旅館を継ぐと決めたようです。

 

小学生にして、新人女将にして、加害者と対峙することになろうとは。更には、加害者を許し、女将を続けていくことを決めようとは。何とも重い話です。

 

 

全てを背負う織子

映画を観ていて思ったのが、織子は大人にあまり頼らず、自ら歩いているように見える姿勢です。

両親を亡くして旅館へ向かう際も、迎えられるのではなく、自ら電車に乗って向かう。

織子に対して更に織子の祖母は、彼女に厳しくするばかり。

ウリ坊始め幽霊達には助けられながらも、幽霊に頼られたり、迷惑を被る場面もあり。

彼女を労い、気晴らしに連れ出したのは劇中1回、村の外部の女性のみ。

 

 

何が「立派やな、おっこ」だよ。

人間一人、それも両親を失って、学校生活の傍ら女将の仕事まで始めて、そこから日が経たないうちに両親の死の原因となった加害者とも鉢合わせて。

新人の彼女一人にここまで背負わせて、周りの大人も、幽霊共(主にウリ坊)も、情けないとは1mmたりとも思わんのか?

仮に心的外傷が無くたって、小学生じゃなくたって、彼女は新人だろう?

特に織子の祖母は、立派そうに振る舞ってはいても織子を叱るばかりで、織子の保護者としては厳しい割に頼りない印象でした。

ウリ坊にも同様のことが言えます。悪戯で織子を困らせておいて、「きっちり指導しておきます」なんて、どの口がいってやがる。彼も口うるさい割に頼りない男、という印象でした。

 

宿泊に来た加害者の運転手の男が織子に言った、「勘弁してくれよ」という台詞。これもたまりませんでした。

被害に苦しみ泣きながらも彼を許す織子に対して、大の大人がこの態度です。

彼に対して「お前は永遠にここで休んでろ」と思わず声がでました。

 

 

映画の温かい雰囲気が、苛つきを加速させた

この映画は、私にとっては「いい話だ」「織子は立派だ」とは、持ち上げたくない映画です。

 

凄惨なトラウマを背負い、更に加害者を許すという、大分重い話です。

その重いはずの話が、演出や雰囲気で温かくなっているのが、許せない。爽やかに終わるのが、許せない。織子の悲しみはどこへ行った。本当に、劇中のグローリーの救済だけで立ち直れているんだろうな?

トラウマから治る段階が読みにくく、その辺大丈夫か?織子はこの先精神を患ったりしないか?という不穏さもあります。

 

映画の尺の問題かもしれませんが、大筋の話相応の重々しさが、相応の悲しみが軽視されているように見えて、だんだん苛ついてきました。

 

 

締め

以前から「自分は重い話が好きだ」と思っていたものの、この映画を見て、重い話の中でも好き嫌いがあり、「自分の好みは何か」を改めて考えても良いとも思いました。その点だけでも、この映画を見る価値はあったかもしれません。

きつめの言葉を綴りましたが、ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。